
CONTENTS
インタビュー:
岸 和郎(建築家)
書籍セレクション:
スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー DVD
イベント情報:
「Ryoji Ikeda datamatics」@YCAM ARTZONE展示情報など
Young Artists Pick Up:
表恒匡 ― 筋を通す、つま先から頭上まで。
ひと×場所×モノ。
第三回目のインタビューゲストは、建築家の岸 和郎さん。
2007年の秋に、『逡巡する思考―Writings1982-2007』という書籍を出版された岸 和郎さん。25年の間に様々なテーマや媒体にて書かれてきた文章をまとめた内容の濃い一冊です。エポックとも見えるこの書籍の紹介とともに、膨大な歴史的知識と その場その瞬間に対する柔軟な洞察力を併せ持った岸さんのクリエーションに迫ってみたいと思います。
「制作や生活において、身近にある"モノ”を一点ご紹介ください」というお願いに、紹介していただいたのは、カッシーナのノートです。端正な黄色いノートに書かれた手描きのスケッチを見せていただきながら、インタビューは進みます。
Text: 岡澤理奈(岡澤理奈事務所)
Photo: 平野 愛
岸 和郎さん × オフィス × カッシーナのノート

"カッシーナのノート"
インタビュアー:素敵な色ですね、黄色のノートって珍しいですよね。
岸 和郎:自分の使う道具に特にこだわりは無いんだけど、このノートはずっと使っていますね。ルイス・カーンじゃないけど、黄色い紙の上だとスケッチが上手く見える(笑)。これはカッシーナで販売していたノート。在庫をありったけくださいと注文したんだけど、もうブルーしか残ってないそうです。だから今はブルーも使います。



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『逡巡する思考―Writings1982-2007』 |
| 共立出版, 2007 3,990円(within tax) 光が満ち風が吹きぬける、「気持ちのいい空間」。直交座標系を追求する気持ち。東京や大阪ではなく京都にこだわる理由。いい建築はイヤな奴でないとできないと思っている、自分自身のことも決していい奴だとは思っていない、という建築・設計への意志表明。 |
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『建築を旅する』造形ライブラリー04 |
| 共立出版, 2003 3,675円(within tax) |
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スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー
映画上映に合わせたメディアショップ企画イヴェントで、關聡志(建築家)とヤノベケンジ(現代美術家)が“メガロマニアバトル”というトークショーを行ってくれたが、現在、フランク・ゲーリーほど巨大(メガロマニア)な建築を造るにふさわしい者はいない。
その名声を決定的にしたのは、やはりビルバオグッゲンハイム美術館である。
もちろんそれまでも著名な建築家ではあったが、広く一般に知れ渡るのは、異形ともいえる巨大なチタンの塊りで、スペインはビルバオの風景を一変させたその建物による。
ただしこのDVDにおいては、もちろん取り上げられているが、決してハイライトというわけではない。他の一連の作品も紹介されるが、やはり建築物の紹介がメインとならない。
それというのも、この作品の監督は“追憶”等、劇場映画の巨匠であるシドニー・ポラックによるもので、長年の友人であるゲーリーが自ら指名したように、いわゆる建築家向けでも、ありきたりなドキュメンタリーでもないものを目指した結果である。
その試みが成功しているかどうかは各自異論もあろうかと思うが、何かを表現しようとする者なら、どこかに必ず心の琴線に触れる瞬間がある。
思い出せば、フランク・ゲーリー自身、建築家の中ではむしろ異端の存在で、独特なフォルムは美術、ファッションに近しい感性を持っており、フィルムの中で明かされている製作にまつわるエピソードなどは、まさにそれを証明しているようだ。
同じく建築の映画としてヒットした“マイ・アーキテクト”のようなドラマは無いが、友人の持つ近さが、独特の空気感で、ビッグプロジェクトが決してマジックではなく、たゆまないスタディから生まれることを教えてくれる。(Text:齋藤孝司)
NEW DIMENSION
石川直樹 赤々舎
写真家/冒険家である石川直樹が日本、ヨーロッパ、アフリカ、オーストラリア、インド、ハワイ、南米と旅をして、洞窟壁画を中心とする岩面画を写真集としてまとめた。
写真家が冒険することも、冒険家が写真を撮ることもある。前者は未知なる被写体を求めて、あるいは個人の精神的な変容を記録せんがために、後者は、決して同行者を許さない過酷な環境における記録者として、あるいは端的に活動の記録のとても身近なメディアとして写真を撮る。
石川直樹はその華々しい冒険歴を誇りながらも、自らを写真家として捉えようとする。
今回の作品集ではそれを正に実感するだけでなく、その妙な線引きなど超え、とても根源的な想像の瞬間を切り取ってみせた。そこでキー・ポイントになるのが洞窟であり岩壁画、岩面彫刻だ。港千尋がいち早く“洞窟へ”(せりか書房)でテキスト化しているような想像力の源、へ畏れながらも近づき、それを記録するためではなく、記憶するために写真を使い、
ゆっくりと内へと入りながら、やがてその深みへ、プリミティブでありながら最新のテクノロジーに匹敵する装置としての洞窟、そこに浮かび上がる壁画達、時を越えた芸術家達の交感する様が、あたかもドキュメンタリーの様におさめられる。
先ごろ提唱され、自身研究員でもある芸術人類学(みすず書房)のエッセンスが作品化した好例といえる。 (Text:齋藤孝司)
建築と写真の現在
TN PROBE表恒匡 ― 筋を通す、つま先から頭上まで。
Text:岡澤理奈
今回ご紹介するのは、美術作家 表 恒匡さん。
2005年に京都精華大学大学院芸術研究科を修了して以来、 神戸アートビレッジセンターの「神戸アートアニュアル2005 眺めるに触れる」や「京都府美術工芸新鋭選抜展 2006」への出品などで活躍する1981年生まれの美術作家です。

2007年12月9日まで、京都三条neutronにて開催された最新の個展「R」では、一瞬完全な黒かと見える長時間露光の夜景写真がアクリルマウントされ、湾曲したり少しだけ隆起した状態で壁面に展示されていました。
ただ二次元平面として写真を提示するのではなく、そこに重力や圧力を加えることにより、二次元の表面をうごめく力学的エネルギーを直裁に視覚化してみせています。
黒い平面に稀に光って見える星やネオンサインと、平面上に発生したベクトルが共時的呼応をみせ、観客の視線や心の動きと呼応するように立ち現れてくる、それは、弱い結びつき:例えば心に描く星座の補助線のようなものに感じられました。
私は、このストイックでありながら詩的でもある作品を作った作家に興味を持ち、話を伺う事にしました。
もの静かで思慮深い佇まいでありながら、今回の作品や美術に関する事を話す時の姿勢は熱っぽくもある表さん。たくさんの話を伺う中で印象的だったのは、2006年、バックミンスター・フラーの装丁デザインを手がけた際に出会った、その書籍の翻訳者でデザイン・サイエンティストでもある梶川泰司さんとのやりとりの中で得た経験が、今回の作品に遠からず影響しているだろうという話です。
重力や引力のような科学的・力学的な現象に対して、美術作家として、一見コンセプチュアルなアプローチと見えて人間の感覚的・感情的な側面に対して働きかけるという課題に関して、今後どう取り組んでいくのだろうという興味を持ちました。
「もっと詳しく、物理的な事象やテクノロジーなどの勉強をしたいと思っているんです。もっとつま先から頭上まで筋を通したい。」という話を聞き、よりいっそう、今後の活躍を期待したい作家だと確信しました。




